2011年1月3日月曜日

50年後の正月の風景

新年あけましておめでとうございます。
新しい年が、みなさまにとって、よい年でありますよう。

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[50年後の正月の風景]
青森から実家の東京に帰省しました。
盆と正月に、日本では、東京から故郷へと往復する人々の巨大な流れが生まれます。
私の場合、青森から東京への帰省ですので
一般的な人の流れからは、反対方向に毎年移動しているわけです。

元旦の東京は、主要なデパートなども休んでいて、とてもすいていました。
青森では、故郷に帰省する人々で街がにぎわいを見せている。

まあ、毎年、同じような風景をみているのですが、
いつも渋滞や満員電車で人だらけの東京の風景が、正月にはすっきり、すいていて、青森がにぎわっているというのは、なんだか爽快な感じがします。
考えてみると、これはまだ、故郷というものが、日本に残っているということの証左なんだろうと思ったわけです。

きっと、50年ぐらい前の日本は、田舎の小さな街にも映画館なんかがいくつもあって、暮らしは慎ましいけれど街は活気に満ちていた。
東京も今よりは、ずっとコンパクトにまとまっていた。

そういう日本の風景の名残が、ちょうど尾てい骨みたいに、現代の日本の正月に現れるのだろうと。
なんだか、このままずっと正月の幸せな風景のままの日本でいたら、地域もずっと元気を回復するし、東京も快適性が格段に向上するだろう、などと思ってしまいます。なにしろ吉祥寺から銀座にいくのに、普段なら小一時間、正月は渋滞もないので、ほんの20分。閉じているお店は多いけれど、やっぱり東京には活気があり不便ということはないですし、青森も親や親戚、幼なじみが顔をあわせる正月のようなにぎわいがずっと日常的に続いていけば、東京に過密するお店も、地域へと戻っていくわけです。

いまから、50年ぐらい先の将来、日本の正月の風景はどのようなものになっているのでしょうか。
各地の故郷から東京に出てきた人々は、東京近郊で子ども生み育てていく。そうして、東京で生まれ育った子供たちは次第に大人になって家族を持つようになる。高度成長時代に日本各地から東京にやってきて住みついた人たちから次の世代へと移り変わり、故郷をよく知らない2〜3世代ぐらい後の人たちへと時代が受け継がれていくことになります。故郷にいる親や親戚も少なくなり、親しい友人もかつての故郷にはいない。いまのような東京への一極集中が、これから50年も維持されているとすれば、もはや帰省する故郷もなく、人々は正月も故郷となった東京に暮らし続ける。50年後の正月の風景は、正月の帰省のラッシュとか、渋滞とか、そういう状態はなくなっているかもしれません。
盆と正月は故郷に帰るという習慣もすっかり忘れられていることでしょう。正月に帰省する人々もなくなり、東京は正月でもいつもとかわらぬ渋滞と喧噪。地域は、正月も閑散としている。

尾てい骨のような状態ではあるかもしれませんが、いまの正月には、確かに、日本の原風景が残っているのです。
この感覚が社会にしっかりと残っている間に、地域主権を確立していくことになれば、50年後の正月の風景はもっと違ったものになっていることでしょう。

地域主権を確立して、地域での自立的な経済活動が活性化することによって仕事が生まれる。東京で生まれ育った第2、第3世代は、東京に暮らしている親や祖父母のかつての故郷や地域で仕事をしに一旦は、田舎に戻り、暮らしていくという生活の選択肢を手に入れることになるのです。そうして人々は、正月には、東京の実家に遊びにもどる。50年後の年末年始は、今とは逆の地域から東京へ、東京から地域へと人々の列ができているかもしれません。

私自身、高度成長時代の初期に長野と静岡生まれの両親が東京で出会い生まれました。たまたま、美術館をつくる仕事を得て青森へと移住することになりました。毎年、人の帰省の流れと反対方向に移動しながら思うことは、地域で仕事ができることの幸運です。

地方分権から地域主権というのは、概念的で単にスローガンの変更にすぎないように思えてなりません。問題は、地域で仕事を得ること、そして続けること。
たとえば、正月の休みを少しずつ長くしていく。最初は1、2日。だんだん、どんどん長くしていって、1月ぐらいを正月休みにする。そんなに長く休みをとったら、東京の企業は潰れてしまうんじゃないかと心配の向きもあるかと思います。けれど、それぞれの地域にそんなに里帰りしている人たちがいるのなら、それに向けた新しいマーケットが生まれるはずです。人口の巨大な移動と一定期間とどまることによる内需拡大。それは新しく巨大なビジネスチャンスとなるわけで、今日の社会的経済的な閉塞を、打開する具体的な方策となる可能性をもっていると確信しています。まだ正月の尾てい骨が残っている今ならできることです。これが失われたら後はありません。1ヶ月正月でうまくいったら1年の3ヶ月は正月休み(笑)。その間の地域でのサイドビジネスや起業はOKということにしたら、きっと田舎の街は大いに賑わいをとりもどし、たくさんの多様性に満ちた仕事が地域に新たに創造されると思うのですが。
まあ、半分は、初夢のような冗談ですが、半分は、正夢になってくれないかとちょっと本気のところもあります。
まずは、いまの正月のような人口分布をイメージして、そこで求められるそれぞれの地域の具体的な活動モデルを考え、実証実験していくことを、少しずつですが、はじめてみたいと思っています。